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行政は、国民の側に立つことは、無いのです。
http://mainichi.jp/area/news/20150610ddf012100021000c.html
(以下は、コピーです)
◇大丈夫?弱者のセーフティーネット

 京都市は今年5月、保育所の「待機児童ゼロ」を2年連続で達成したと発表し、「快挙」と強調した。だが、やむを得ず市の勧める施設の利用を断った子供たちは統計上、待機児童から除外されている。待機児童の解消とともに市営保育所の民営化も急ピッチで進んでおり、民間での受け入れが少ない障害児を持つ母親らは不安を抱えている。効率と数値目標を優先しているとも言える保育行政改革が進む中、「公」が担う弱者へのセーフティーネットの在り方が問われている。

 ◇待機中でもカウントされず

 京都市役所で5月20日、和服姿の門川大作市長がにこやかな表情で記者会見に臨み、認可保育所などの待機児童(4月1日時点)が2年連続でゼロになったと発表した。「子育て先進都市」を掲げる市は昨年4月、関西の政令市で初めて「ゼロ」を達成。門川市長は「継続するのは難しいが、何とか実現できた。就学前の子どもに占める保育所などの児童割合も、政令市でトップ水準だ」と胸を張った。


 伏見区に住むパート従業員の女性(34)は、このニュースを聞いて戸惑った。次男(2)を認可保育所に預けたいと申し込んできたが、2年連続で「入所不可」の通知を受けていた。なのに次男は「待機児童」に含まれていなかったからだ。

 厚生労働省の基準では、「特定の保育所などを希望し、他に入所可能な場所があるのに利用を辞退した」ケースは「待機児童」から除外できる。京都市では女性の次男を含めて今年4月は461人、昨年4月は359人が該当する。

 子供と4人で暮らすこの女性が「特定の保育所」にこだわるのは、ダウン症を抱える小学1年の長男(6)の集団登校と両立させたい事情がある。集団登校には女性の付き添いが欠かせず、昨年同様、自宅近くの保育所2カ所に絞って申し込んだ。しかし市からは「空きがない」と断られ、別の保育施設を勧められた。だが通うのが不便で無理だった。

 今年4月以降、女性は次男を乗せたベビーカーを毎朝片手で押し、もう一方の手を長男とつなぎ、約20分の集団登校に付き添う。その後自宅に戻り、約1時間かかる職場へ車で急ぐ。次男は職場でたまたま空いていた託児所に預けて仕事をしているが、休日は疲労で寝込むことも。女性は「このままでは仕事を続けられず、失業してしまう」と不安を漏らす。

 ◇進む民営化、障害児受け入れは


 待機児童解消を最優先課題に掲げる市は、「新たな施設整備の財源確保」を理由に市営保育所の民営化計画を前倒しで進めている。だが、ここでもひずみが生じかねない。


 5月下旬、京都市営の聚楽(じゅらく)保育所(中京区)。4歳児クラスの子供たちが、ピアノに合わせてリズム遊びをしていた。このクラスの佐井愛理ちゃん(4)は先天性筋ジストロフィーという難病で筋力が弱く、歩くことができない。音に合わせてスキップする子供たちを、愛理ちゃんは床に座って見つめる。

 座ったまま友達と手をつないで腕を前後させる「お船はぎっちらこ」の歌が始まると、「僕があいちゃん!」「私が!」と友達が次々に駆け寄り、愛理ちゃんの取り合いに。愛理ちゃんは笑い声を上げてリズム遊びを楽しんだ。皆が忍者のように走り出すと、今度は保育士の女性が愛理ちゃんを抱き上げ、同じように忍者のポーズ。愛理ちゃんも照れくさそうに笑顔を浮かべた。

 母優子さん(37)は複数の幼稚園に断られた末、ようやく愛理ちゃんを聚楽保育所に入所させることができた。昨年1年間の集団生活で、愛理ちゃんは自分から友達にかかわるようになり、話す言葉も増えた。

 だが、市は25カ所あった市営保育所のうち10カ所を2019年度までに民営化する計画で、聚楽保育所も18年度に移管予定だ。民営化の2年前には移管先の選定が始まり、1年前には新しい職員が現場に入ってきて保育環境は変化する。優子さんは「進行性の病気なので、愛理にとっては今が青春。貴重な時期に民営化をめぐるどたばたで混乱させないでほしい」と訴える。

 市営保育所は、公的機関として障害児への手厚い保育をしてきた。14年3月末時点で市内の民間園での障害児の割合は3・75%だが、市営は10・48%で約3倍に上る。市営が、民間で受け入れられにくい障害児の受け皿となってきた。

 これまで市は、障害児に対応する職員も市営保育所に手厚く配置してきた。「障害児の受け入れ先がなくなる」との不安の声を受け、配置基準を変えて民間の職員数を増やす一定の措置は講じた。

 ◇数値目標重視、中身置き去り危惧

 保育所の民営化は01年発足の小泉政権以降、全国で進められてきた。01年4月時点では公立施設数が民間より多かったが、08年4月に逆転し、その後は差が開く一方だ。

 厚労省の統計によると、13年4月時点で20政令市の保育所に占める公立施設の割合は約27%。一方、京都市は約10%で福岡市に次ぐ低さだ。もともと公立が少ないのに、なぜ14年度になって民営化に着手したのか。市は「市営保育所は職員の給与などで高コスト。保育所などを希望する保護者はさらに増えるとみられ、財源確保のために民間にできることは民間に任せる」と、コスト削減の必要性を強調する。


 だが、京都華頂大の藤井伸生教授(社会保障論)は「民間は、職員の勤続年数の短さなどで低コストになっているに過ぎない」と指摘する。

 厚労省は13年度からの5年間で40万人分の保育の受け皿を確保する「待機児童解消加速化プラン」を進めており、今年4月には「子ども・子育て支援新制度」も始まった。

 子育て家庭の安心感よりも数値目標が重視される保育行政改革が進んでいる。だが、その陰で弱者がしわ寄せを受けていないか。保育の中身こそが問われている。



Posted by いざぁりん  at 00:08