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こちらです。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160304-00107629-toyo-bus_all&p=1
(以下は、コピーです)
「日本に戸籍のない人が1万人以上いる!」
そう言われて驚かない人がいるだろうか。
通常、戸籍は赤ちゃんが生まれて、自治体に出生届を提出することで作られる。ところが、なんらかの事情でこの出生届が提出されず、戸籍のないまま生きている人たちがいる。
彼らの生きる道は過酷だ。小学校すら通えない、健康保険証がないから予防注射はおろか、病院に行けない、身分証明書がないからまともな働き口が得られない、結婚・出産も困難を極める……。
そんな彼らに手を差し伸べ、戸籍の取得に尽力する活動を13年間にわたって続けてきた女性がいる。元衆議院議員で「民法772条による無戸籍児家族の会」代表をつとめる井戸まさえさんだ。
井戸さんは自らの子供が無戸籍児になった経験から、無戸籍者の支援活動を開始、これまで1000人以上の無戸籍者の戸籍取得に奔走してきた。その活動をまとめた『無戸籍の日本人』(集英社)が今、大きな反響を呼んでいる。そこに描き出される無戸籍者の生活ぶりはあまりにも衝撃だ。なぜ今の日本でこんなことが起こるのか、どうしたらこの問題を解決できるのか、井戸さんに話を聞く――。
聞き手・水上 花(ジャーナリスト)
■ 謎1 本当に今の日本に1万人も無戸籍者がいるのか? 

 ――井戸さんの『無戸籍の日本人』を読んで、無戸籍者のあまりのすさまじい人生に言葉を失いました。こんな人たちがいることを、ほとんどの人が知らないと思うのですが、一方で「ホントに今の日本でこんなことが起こるの?」という素朴な疑問もわきました。無戸籍者が今の日本で少なくとも1万人以上いるというのは本当ですか。

 そうですよね、私も自分が産んだ子が無戸籍になるという経験をするまでは、無戸籍問題など、まったく知りませんでした。

 でも、戸籍がない人は確実に存在するのです。きちんとした統計はどこにもないので、1万人というのは「最低限、確実にそのぐらいはいる」という数字です。実際にはもっとたくさんいると思います。出生届が出せないなどの事情で、一時的に無戸籍になったことのある人を含めて累計すれば、20年間で6万人いることになるんです。相当な人数だと思いませんか。

 ――法務省では、2015年7月から無戸籍者の調査を開始し、現在の日本における無戸籍者は686人、うち成人132人(2016年2月10日現在)と発表しているようですね。ずいぶん数に開きがありますが。

 実はこの調査は、法務省が自治体に調査票を出しているのですが、回答率がわずか2割程度なんです。しかも1歳未満の子は数に入れていないなど、実態を反映した数字とはとても言えないと思っています。

 私が支援した中には、同じ自治体の母親教室で出会った人同士が無戸籍児の母だったというケースもありました。誰も簡単には口に出さないのでわからないけど、意外にみなさんの身近にも「無戸籍者」は、存在しているかもしれません。

■ 謎2 なぜ無戸籍になってしまうのか

 ――そもそもなぜ無戸籍者が生まれてしまうのですか。

 一番多いのは、離婚したあとに、新たなパートナーとの間に子どもができた場合です。

 民法の772条の2項という法律があって、「法的離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定される」と規定されています。そのため、たとえ離婚したあとにできた子どもでも、300日以内に生まれてしまった場合は、縁もゆかりもない前夫の子どもとして出生届を出さなければいけないんです。

 私もこのケースでした。私の場合は離婚調停が非常に長引き、別居してから離婚が成立するまでにかなり時間がかかっています。その後、今の夫と結婚をして子供をもうけたのですが、この子が早産で法的離婚後300日以内に生まれてしまったんです。

 出生届を出したところ、自治体から「この子は現夫の子とは認められない。前夫の子として改めて出生届を出すように」と告げられ、驚愕しました。こんなことを言われて納得できる人がいるでしょうか?  まったく関係のない前夫の子どもとして出生届など出せるはずもなく、子どもは無戸籍状態に陥りました。

 結局、私は法廷闘争を経て、七転八倒の末、現夫の子として子どもの戸籍を獲得しました。

 この私のケースが判例となり、それから数年して「離婚後の妊娠については、現在は医師による妊娠時期の証明があれば、前夫の子ではないとして出生届が出せる」という特例(法務省民事局長通達)が認められるようになりましたが、そのことを知らない人も当事者には多いんです。

 また申請先の窓口の対応も徹底されていないため、一時的にせよ無戸籍になってしまう人はなくならない状況です。

 ――「子どもが無戸籍になるのは、妻の不倫の結果だろうから仕方がない」という声も一部にあるようですね。それについてはどう思いますか。

 無戸籍の子どもと親に対して、そうした言葉を投げつける人がいるのは事実で、とても残念なことです。

 離婚前に夫以外の人の子を妊娠したという場合もありますが、単純にいわゆる「不倫」とは言い切れないケースがほとんどです。夫のDVで家を出て、長く離れていても離婚ができない状況にあった場合や、離婚を決めて届けを夫に出して別れたはずなのに離婚届が提出されていなかった場合など、すでに結婚が破綻し、民法の上でも「不貞」とは判断されないケースが多いのです。

 でも、たとえ不倫であったとしても、生まれた子どもへの差別は許されないことです。

 ――それ以外にもいろいろな事情で無戸籍になってしまう人もいるようですね。

 経済的、環境的状況のせいで、親が出生届を出せなかった場合などもあります。そのあたりも本に詳しく書いていますが、いかにさまざまな形で無戸籍の人が生まれているのか、わかっていただけるかと思います。

 ただ、よしんば親に落ち度があって子どもが未届けとなっていたのだとしても、その子どもには何か罪があるでしょうか。まったく罪はありませんよね。むしろ、現場で見ていると、親の庇護が受けにくいぶん、そうした子どもには、より手厚い支援が必要だと私は思っています。

 でも、現状はさまざまな不条理を子どもたちに背負わせ、苦労させて、そのまま放置です。これはなんとしても正したいことだと思っています。

■ 謎3 無戸籍者はいったいどんな生活を送っているのか

 ――誰もが持つ疑問として、「無戸籍の人はいったいどんな人生を送っているのか」というのがあると思います。

 無戸籍に陥るということは、そうなってしまう背景というのがあって、そこには多くの場合、貧困、虐待、暴力の闇が広がっています。私も実際に支援してきて、信じられないような現実をいくつも見てきました。

 人目をしのぶように暮らしている人も多く、おカネを得るためには日陰の仕事を選ぶしかないことも。犯罪すれすれの場にいることも少なくありません。

 本で紹介したケースでは、売春婦の母親とずっと安ホテルで寝泊まりをする生活を続けてきて、一度も「普通の家」で暮らしたことのない男性、母親が夫の壮絶な暴力から命からがら逃げだし、新しい地で知り合った男性との間に生まれたものの、出生届が出されないまま、貧困の中で成人した女性。彼女は自らの性同一性障がいも抱えて、ずっと苦しんできました。

 貧困や暴力、病気などの困難にさらされても、どこにも相談できず、どこからも支援を受けられず、みんなそれでも必死に生き延びているんです。

■ 謎4 「再婚禁止期間の短縮」は解決にならないのか? 

 ――最近、「再婚禁止期間を短縮するべき」という最高裁判決が出たようですが、そうなったら無戸籍はなくなるのでしょうか。

 「女性は離婚後6カ月間は再婚できない」と規定されてきた、民法733条には、昨年12月に違憲判決が出ました。この規定と、先に述べた民法722条の規定を合算すると、法律上、「誰の子供でもない」期間(80日間)ができてしまうことも、違憲理由のひとつです。これに従い、再婚禁止期間を100日に短縮する改正案が出されています。

 しかし結論から言うと、再婚禁止期間を短縮しても無戸籍問題はなくならないと思います。

 そもそも、先ほど述べたように7年前に、法務省から通達が出され、「離婚後の妊娠であることが医師により証明できれば、その子は前夫の子としてではなく、出生届を出せる」という特例ができました。この通達によって、離婚後に妊娠した場合の子どもについては、無戸籍になる恐れは法的にはなくなりました。

 しかし、(法律上の)離婚前に妊娠していた場合は、子どもの父親は、法的には前夫とされてしまいます。つまり、結婚生活が破たんして、新しいパートナーとの間に子どもができたが、法律上はまだ離婚が成立していないといった場合です。これを解決できない限り、無戸籍児が生まれ続け、問題はなくならないでしょう。

 私はこの旧弊な法律は廃止するべきだと思っています。廃止すれば、かなりの数の無戸籍児が救われる可能性があります。たとえば離婚後300日以内でかつ、婚姻後200日以降に生まれて、嫡出が前夫と後夫に重なる場合。この場合は「父未定」として出生届が出せるからです。

 ――無戸籍者がいることが確認されていても、国は積極的に対策を立てようとしていません。この問題が放置されていることをどう思いますか。

 私はこれを、「国による、子どもへの一種の虐待=“ネグレクト”(無視・放置)」だと思っています。そこに実際にいる、困窮している子どもたちを、見なかったふりをして放置しているわけですから。

■ 謎5 無戸籍問題がいつまでも解決しないのはなぜか

 最近でこそ、無戸籍であっても住民票が取れることも増えたため、教育や医療にアクセスできるようになってきましたが、それでもまだ、仕事に就くことは難しい状況です。彼らは当然、「マイナンバー」も手に入らないので、その施行によって、より生きづらい状況も新たに生まれています。

 法律の適用が及ばない無戸籍者がこれほどたくさんいることは、国家にとっても大きなリスクだと私は思うのですが、その元凶ともいえる法律、民法772条を、国は変えようとしていません。

 ――では一体どうしたら無戸籍問題を解決できるのでしょうか。

 まずは772条の改正・撤廃です。DNA鑑定などおよびもつかない、明治時代に制定されたこの法律は、今の時代にまったくそぐわないものとなっています。私もこの法律を改正すべく、政治の場に出て必死で闘ったのですが、力が及びませんでした。このあたりの攻防は本に詳しく書いています。

 昨年話題になった「選択的夫婦別姓」や、先に触れた「再婚禁止期間」の問題とも共通するのですが、この問題には日本の民法、政治の根源的な問題もかかわっているんです。

 でもあきらめることなく、この問題を世に問い続けることが私の使命だと思っています。



Posted by いざぁりん  at 01:35