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こちらです。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160407-00048368-gendaibiz-int&p=1
(以下は、コピーです)

 放射性物質(核物質)の安全管理を議論する「核セキュリティ・サミット」が先週、米国の首都ワシントンDCで開催された。主な狙いは、核燃料など放射性物質が「IS(イスラム国)」のようなテロ集団の手に渡るのを未然に防ぐことにある。

 ●“A Nuclear Job Half Done” The New York Times, APRIL 1, 2016

公式発表の背後で加速する核開発

 今回のサミットでは、これまで各国が放射性物質を安全に管理する上で成し遂げたことや、今後の取り組みなどが報告された。

 たとえば日本と米国は共同で、これまで茨城県東海村の原子力関連施設で管理されてきた研究用の高濃縮ウランやプルトニウムを、米サウスカロライナ州の核管理施設に移管したことを報告した。

 また中国は、自国並びにガーナやナイジェリアなど諸外国にある原子力発電所を(核兵器への転用が難しい)低濃縮ウラン型へと転換することを約束。韓国も今後、空港での核検知システムを強化すると約束した。

 さらにカザフスタンも核物質の海外流出を防ぐため、今後、輸出関連法を強化するという。

 しかし、これらの公式発表にもかかわらず、米国と並ぶ大量の核保有国であるロシアがサミットを欠席したため、むしろオバマ政権が発足時に掲げた「世界的な核廃絶」という、根本的な目標を達成することの難しさを、改めて浮き彫りにしたともいわれる。実際、当のロシアは今、(後に紹介する)米国と競うように核兵器の刷新計画を推進している。

 また中国やインド、パキスタンなどは現在、核兵器の削減ではなく、むしろ拡充を図っている。さらに北朝鮮も(信ぴょう性は低いとされるが)水素爆弾を開発したと主張するなど、より強力で大規模な核兵器の保有を目指している。

「スマート核兵器」とは何か?

 しかし、これら各国の不穏な動き以上に関係者の間で懸念されているのが、核廃絶を高らかに謳い上げる当の米国の姿勢だ。実際のところ、オバマ政権は総額1兆ドル(110兆円以上)もの核兵器・刷新計画を支持するなど、その矛盾した姿勢が批判されている。

 ●“As U.S. Modernizes Nuclear Weapons,‘Smaller' Leaves Some Uneasy” The New York Times, JAN. 11, 2016

 この刷新計画の一環として注目されているのが「B61 Model 12」だ。これは小型ミサイル形式の核爆弾で、主に爆撃機から発射される。

 B61の初代となる「Model 1」は1960年代に開発されたが、その後、モデルチェンジを重ねる度にスマート化(高度化)の度合いを深めていった。

 最新型の「Model 12」では高性能コンピュータを搭載することで、たとえば「トンネルの奥深くに隠された敵の武器庫」など、より難しいターゲットにも高い精度で命中することが可能になった。

 さらにターゲットの種類や大きさなどに応じてエネルギーを調節することにより、核爆発のパワー(威力)や影響範囲を必要最小限に抑えることができる。これによって(ターゲットの近隣地域に居住する)一般市民の巻き添え被害などを未然に防ぐことを狙っている。

 核爆発のエネルギーは、最小で「広島に投下された原爆」の2パーセントにまで落とすことができるという。

核の抑止力が喪失する危険性も

 こうしたスマート核兵器の開発を進めるオバマ政権の意図は明白だ。それは政権発足時に掲げた「核廃絶」という遠大な目標に少しでも近づくため、核兵器のエネルギー(つまり、核爆発を引き起こすウランやプルトニウムなど放射性物質の量)を最小限に抑えようとしているのだ。

 が、これに対する周囲の反応は複雑だ。「核廃絶に向けて、合理的かつ現実的な取り組み」と評価する声がある一方で、真っ向から反対する意見も聞かれる。

 たとえば、1990年代のクリントン政権で国防長官を務めたウイリアム・ペリー氏らが、スマート核兵器の開発に異議を唱えている。核兵器の高度化によって、かえって従来の核兵器が持っていた「核の(戦争)抑止力」が失われてしまう恐れがあるからだ。

 つまり、従来の原爆や水爆などであれば、その巨大な爆発力や放射能汚染などを制御できなかった。結果、広範囲の地域に壊滅的な被害をもたらすため、敵対する当事国の間に何とか(核兵器の使用につながりかねない)全面戦争を回避しようとする動きが生まれた。これが、いわゆる「核の抑止力」である。

 これに対し、スマート核兵器のように、核爆発の威力を必要最小限に制御できるとすれば、当事国の間に「それなら戦争になってもいいし、止むを得ない場合には核兵器を使う選択肢もありではないか」という機運が生まれるかもしれない。つまり「核の抑止力」が失われてしまうという考え方である。

核物質と核兵器の削減は違う

 それ以上に根本的な疑問の声も上がっている。つまり「スマート核兵器は、核に対する米国の偽善的な政策の象徴ではないか」という見方だ。

 というのも、オバマ政権が発足した当初、米国はロシアとの交渉を進め、両国の間で(たとえ少しずつでも)核兵器の削減に向けた合意に漕ぎ着けた。

 が、その後、米国を中心とするNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大や、これに反発したロシアのクリミア併合などを経て、米ロ両国の関係は東西冷戦時代に逆戻りしたかと思われるほど悪化。これによって、一旦は進むかに見えた「核兵器の削減交渉」は完全に棚上げされてしまった。

 こうした中で「オバマ政権は本気で核廃絶を目指す意欲を失ってしまった」との見方が優勢になってきた。それを象徴的に示しているのが、前述のようなスマート核兵器の開発というわけだ。

 確かに、核兵器の爆発エネルギーを最小限に抑えるとすれば、それは物理的には「核物質の削減」につながる。しかし、それは本来、オバマ政権が進めるべき「核兵器の削減」とは似て非なるものだ。むしろ、より使い易いスマート核兵器を生み出すという点では、「核廃絶」というよりも「核開発」ではないか。そういう皮肉な見方が広がっているのである。

核廃絶は風前の灯

 こうした米国の姿勢を、諸外国は「ここぞ」とばかりに攻撃している。まずロシア政府はB61のようなスマート核兵器の開発・実験を行う米国を「無責任で挑発的」と非難。一方、中国は米国が開発中の巡航ミサイル型核兵器に憂慮を示している。

 さらに北朝鮮は「そもそも我々が(自称)水爆の実験を断行したのは、米国が加速しつつある核開発の脅威に対抗するためだ」と責任を相手になすりつけている。このため今後は核廃絶どころか、核兵器を巡る新たな軍拡競争が始まるのではないかとの懸念さえ生まれている。

 特に米国が進めようとしているスマート核兵器が諸外国にも広がれば、戦争当事国が互いに核爆発の威力を制御できることで、逆に「限定的な核戦争」の可能性が、かつてないほど現実味を帯びてくるとの指摘がある。

 これに対しては、「そのように核戦争が現実的になってくれば、むしろ各国政府はより慎重に対応するから安全だ」という意見と、逆に「いや各国政府の間に疑心暗鬼を呼んで、一触即発の事態を招きかねない」という正反対の意見が政策関係者の間で聞かれる。

 要するに、不毛な神学論争に陥ってしまい、肝心の核廃絶を実現する建設的で具体的な提言は見当たらない。

 皮肉なことに、仮に新たな軍拡競争に歯止めをかけるものがあるとすれば、それは「世界平和」のような理想論や道義的な責任感などではなく、むしろ純粋に「経済的な限界」だという。

 たとえば米国のスマート核兵器は従来に比べ、格段に開発コストが増すので、今後、議会において予算面での制限がかかる可能性があるという。

 しかし、そこには核兵器の削減へと向かうほどの勢いはない。オバマ大統領が当初表明し、それによってノーベル平和賞も受賞することになった「世界の核廃絶」は、今や極めて厳しい状況へと追い込まれてきたようだ。




Posted by いざぁりん  at 01:32