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こちらです。
http://mainichi.jp/articles/20160717/ddm/003/030/069000c
(以下は、コピーです)
 トルコ軍の一部が試みたクーデターは、エルドアン政権の強権的な政治手法によって蓄積された反発が一気に噴き出した結果とみられる。反乱は失敗に終わったものの、中東の大国で起きた混乱は、過激派組織「イスラム国」(IS)や難民の対策の行方に直結する。欧米諸国は状況の推移を固唾(かたず)をのんで見守った。


反乱勢力、特権奪われ

 「民主的、世俗的な法治は現政権下でむしばまれてきた」。国営テレビTRTの画面が突然切り替わり、女性アナウンサーがおびえた表情で、軍の反乱勢力の声明を読み上げた。憲法の秩序、民主主義、人権、自由−−。「政教分離や民主主義の原則維持」を大義名分に掲げ、崩壊した秩序を取り戻すと強調した。

 「世俗主義の守護者」を自任する軍にとって、イスラム色を強めるエルドアン政権の統治は、国是の政教分離からかけ離れた姿勢と映った。政権を批判するジャーナリストへの圧力など、強権的な政治手法と民主主義の隔たりも軍の反発を招いた可能性がある。

 トルコでは1923年の共和国成立以来、政治が不安定化したり、イスラム化を進めようとする政権が現れたりする度、軍が政治介入してきた。60年には政権が野党や言論機関への弾圧を強めたのに対し、軍がクーデターで権力を掌握。71年には軍が首相らに書簡を送って退陣させた「書簡クーデター」があった。80年には2大政党の対立で政治が混乱し、再び軍がクーデターを起こして83年の民政移管まで軍政統治。97年にもイスラム系政党中心の政権に軍が政治介入し、首相が辞任している。

 エルドアン大統領は2003年の首相就任後、徐々に軍の弱体化を図った。教育・放送分野への軍の影響力を排除する制度改正を進めるなど、少しずつ軍の特権を奪った。07年に軍内部でのクーデター計画が暴露されると、政権は多くの幹部を含む200人以上の軍人の大量逮捕に踏み切り、一気に軍の弱体化に成功。国民の間の「軍離れ」が進み、10年の国民投票で憲法改正案が承認され、軍人の不訴追特権を剥奪した。こうした状況に、不満が募っていた可能性がある。

 ロイター通信によると、ユルドゥルム首相は今回の事件を受け、再発防止のため、死刑の導入を視野に憲法改正を検討する考えを明らかにした。強権化がさらに進む懸念もある。

 また、エルドアン政権は米国に亡命中のイスラム教指導者、ギュレン師を信奉する軍内部の「ギュレン運動」の支持者による反乱だと主張。ギュレン運動は学習塾などの教育機関を拠点に優秀な人材を軍や警察に送り出しており、政権はその影響力を警戒している。

 日本貿易振興機構アジア経済研究所の今井宏平研究員(現代トルコ外交)は「政権に不満を抱く軍の一部勢力に、ギュレン支持者も加わって反乱を起こした可能性がある」と指摘する。

米、対IS影響懸念

 米国は、トルコ軍の一部が試みたクーデターの成否がまだ見通せない段階で、エルドアン政権を支持するオバマ大統領の談話を発表するなど、いち早く対応した。トルコが不安定化すれば、オバマ政権が力を注ぐ過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いに影響が出るとみているためだ。

 有志国とともにISとの戦いを続ける米国は、6月下旬にイラク中部ファルージャを奪還するなど攻勢を続けている。だが、シリアでは先が見通せない状態が続いており、昨年9月からシリア空爆を始めたロシアとの連携を模索。ケリー国務長官をモスクワに派遣し、14日夜にプーチン露大統領、15日にはラブロフ露外相と協議し、シリア内の反政府勢力である国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」とISに対する空爆で米露両国が協力関係を築くことに合意した。

 シリア、イラク両国と国境を接し、米軍の出撃基地があるトルコが不安定化する事態に陥れば、ロシアとの協力作戦にも影響が出かねない。米国はクーデターが失敗に終わったことに胸をなで下ろしつつ、欧州を不安定化させているシリアなどからの難民・移民や、テロリストの流入を防ぐための国境管理強化などの面で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコが要石の役割を果たすと期待している。

 米軍がIS空爆の出撃基地として使用しているトルコ南部のインジルリク空軍基地では16日、トルコ政府により周辺の上空が飛行禁止となり、電力供給も遮断された。

 一方、欧州連合(EU)は、トルコに難民問題やテロ対策で協力を求めつつ、エルドアン政権の強権的な姿勢を巡って対立してきた。クーデターは失敗に終わったものの、エルドアン政権を弱体化させる可能性があり、専門家からは「今後はトルコと交渉しやすくなる」との見方が出ている。

 欧州に流入する難民・移民問題を巡り、EUとトルコは今年3月、トルコ国内にいるシリア難民への経済支援やトルコ国民のEUへのビザ自由化などの見返りに、ギリシャに入った「違法な移民」全員をトルコに送還するという内容で合意。トルコからボートで密航しギリシャ経由で北上する「バルカンルート」の難民・移民の数は激減した。だがEUはビザ自由化の条件として、報道の自由まで抑圧する「行き過ぎた」トルコの反テロ法改正などを求めた。トルコは「このままでは移民送還に協力できない」などと態度を硬化させ、交渉は難航していた。

 EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(外相)は16日、アジア欧州会議(ASEM)首脳会議でモンゴルを訪れている加盟国の外相と緊急会合を開き、軍事クーデターを非難する見解で一致。エルドアン政権を全面的に支援する姿勢を示した。


 ■ことば

トルコ

 正式国名はトルコ共和国。古代から東西文明の十字路として栄えた。面積は約78万平方キロ。人口は約7900万人(2015年)。首都はアンカラ。イスラム教徒が多いが、政教分離政策を取る。軍は陸海空軍があり、兵力は約51万人。国民皆兵制で、男性には原則12カ月の兵役がある。欧州連合への加盟を目指し、02年に死刑制度を廃止した。



Posted by いざぁりん  at 04:15