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天皇制は、廃止しなければなりません。
http://digital.asahi.com/articles/ASK5S55CHK5SPLZB00P.html?rm=481
(以下は、コピーです)
 現代社会の問題を、京都ゆかりの識者が独自の視点から語る企画「京の視座」。今回の語り手は、象徴天皇制の研究者、河西秀哉さん。聞き手は日本近現代思想の研究者、中島啓勝さんです。

 ――昨年8月、天皇陛下が生前退位の意向がにじむ「おことば」を表明されて以来、メディアに引っぱりだこですね。

 「象徴天皇制の研究者は多くないんです。大学院で、象徴天皇制への社会の関心は薄れてきているので、テーマを変えた方がいいと言われました。最近になるまで、歴史学でも憲法学でも象徴天皇制にはあまり関心がなかった」

 ――河西さんはなぜ関心を持ったのですか。

 「11歳の時、天皇の代替わりがあって、強烈な印象を持ちました。両親が毎日NHKのニュースで昭和天皇の病状を見ていて、中日ドラゴンズが優勝してもセールがなかった。異様な状況が続いて、亡くなったらテレビから娯楽番組が消えた。天皇って何だと思ったのがきっかけです」

 ――天皇の退位を実現する特例法案が国会に提出されました。政府は今国会中の成立を目指していますが、与野党が合意するまでの議論は複雑でした。何が問題だったのですか。

 「核心は、日本国憲法第1章の天皇条項と、第11条の基本的人権との矛盾にあります。敗戦後、天皇制を残すことが大前提で、そこに民主主義をつながなくてはならなかった。天皇に職業選択の自由はなく、天皇になることも辞めることも選べない。近代の天皇は『現人神(あらひとがみ)』として、それでよかったけれど、社会に民主主義的な価値観が浸透しても、今の天皇は人権を認められない現代的でない存在としてあり続けなければならなかった。その矛盾を背負っていることに、この70年、国民は目をつぶってきた」

 「近代天皇制では天皇が権力を持っていたから戦争に突き進んだという反省があるので、戦後の天皇は自身の意思を発しない建前になっています。ところが、まさに象徴を担っている天皇自身の『おことば』で、これはやっぱり矛盾だと突かれてしまった」

 「かつての天皇制は、万世一系や神の子孫であるといって正統性を担保してきた。ところが象徴天皇制では、憲法の規定や国民の支持によって天皇の地位がある。非近代的な存在であると同時に近代的でもあるのです」

 ――国民の側が天皇に対して矛盾した立場を押しつけ、強いてきた面があります。それと同時に、天皇自身がその矛盾を読み抜いて、整合性をもたせようとしています。

 「面白いのは、今の天皇は神武天皇やアマテラスなど天皇制の始まりについては多くを語らず、天皇制が続いてきた歴史を語る。近代的実証主義的な万世一系なんです」

 ――この国における天皇という存在の意味を、自ら確定する動きにもみえます。

 「そういう意味では、右派の人の考えとは、ずれています。彼らは、明治国家が正統としていた古事記、日本書紀の世界観の天皇制を、まさに正統化したい。でも今上天皇は皇太子時代から、『政治から離れた立場で国民の苦しみに心を寄せたという過去の天皇の話』を引いて、『象徴という言葉で表すのに最もふさわしいあり方ではないか』と述べています。明治より前の地点と現代をつなげようとしている。だから、それが右派から批判されもする」

 ――この話は結局、日本人にとって憲法って何だ、という問題ですね。主権者である国民ではなく、憲法の理念を一番忠実に体現しようとしてきた天皇自身が、議論をリードしているようにみえます。

 「そこがすごく問題で大事なところ。私たちや政治家が非常に短期的な目で見ているのに対し、天皇は長期的な広いスパンで見て考えている。政治家の堕落と相まって、近年一段と天皇に尊敬が集まっていますが、理由はそこにあるのかもしれません」

 ――世界的にポピュリズムが広がり、特権階級に対する反発が高まっていて、責任を持って決断するリーダーを待望する方向に進みやすい。トランプ大統領やプーチン大統領のような強力なリーダーを求める動きが世界中に起きています。まったく違うようですが、日本では天皇が、責任あるリーダーを求める構造を体現しているのでは。

 「この数年の、天皇に対する国民の思いには、そういう側面がある気がします。福祉にしても、被災者にしても、ある種の格差社会が広がっている中で、その苦しみを積極的にすくい取り寄り添おうと行動してきた。それを何となく私たちは支持している」

 ――天皇が弱者に寄り添うことで、社会内の対立や不満が弱まる側面はあると思います。またそれは天皇の権威を高めることでもあります。

 「それが本当にいいことなのか、今考えなくてはいけないと思います。天皇がやっていること自体、本当に日本国憲法が定める象徴の概念に合致する解釈なのかを問わなくてはいけません」

 ――国民主権と真剣に向き合うならば、天皇制の存続そのものを問うような根本的な議論が出てきてもおかしくない。

 「本当は今回がその良いチャンスでした。天皇自身は、天皇制を安定的に引き継いでいってほしいと述べました。あの『おことば』は天皇による天皇制の生存戦略にも見えます。天皇を私たちと同じ人間だと思うのなら、主権者としてその生存戦略を正面から受け止めて議論すべきでした。なのに政府は一代限りの特例としてスルリとかわしました。天皇にとっても気の毒なことです」

 ――明治のころから、政府は天皇を自分たちに都合のいいシステムとして利用してきました。現政権も究極的には変わらない。

 「今回の対応はこれでよかったのか、これから天皇制をどうするのか、本質的な議論がないまま進んでいます」

 「保守的な人たちは、明治時代の天皇制のあり方を何とか残したいと考えている。リベラルな人たちは、日本国憲法を守ると言う天皇はきわめてリベラルに見えるので、天皇制を維持したいという天皇の意思を見抜けていない。私たちも天皇がかわいそうとは思っても、真正面から象徴天皇制について考えようとはしてこなかった」

 ――結局、国民が考えていない。市民が真剣に政治に参加しようとしていない。

 「それを仕方ないと片付けるのではなく、私は常に思考することが大事だと思っています。継続的に、私たちが天皇制についても声を上げていかなくてはいけない」(構成・伊佐恭子)

■日本国憲法条文

 第1章 天皇 第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

 第3章 国民の権利及び義務 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

     ◇

 《語り手・河西秀哉(かわにし・ひでや)さん》 1977年名古屋市生まれ。名古屋大大学院博士後期課程修了。博士(歴史学)。京都大助教などを経て、神戸女学院大文学部准教授。著書に「『象徴天皇』の戦後史」「皇居の近現代史」「明仁天皇と戦後日本」など。

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 《聞き手・中島啓勝(なかじま・よしかつ)さん》 1979年大阪府生まれ。京都文教大非常勤講師。京都大大学院博士後期課程研究指導認定退学。専門は近現代日本思想、歴史哲学。研究テーマは京都学派の哲学。



Posted by いざぁりん  at 00:42