京つう

イベント  |伏見区

新規登録ログインヘルプ



こちらです。
http://president.jp/articles/-/11777
(以下は、コピーです)
早期人材育成と採用競争力の強化が狙い

「2012年にLCC(格安航空会社)元年を迎え、今後、航空業界は競争が一段と厳しくなる。その中で私たちと一緒に考え、働くことができる仲間をつくりたい」

全日本空輸(ANA)の取締役執行役員の河本宏子氏が丁寧な物言いながら、強い口調で語る。オペレーション部門副統括客室センター長として、6000人に及ぶ客室乗務員を率いる。

同社が昨年8月下旬に発表した、客室乗務員の採用形態の変更が話題を呼んでいる。6000人のうち、1600人ほどになる契約社員の採用制度を廃止し、今春から正社員雇用に切り替えるといったものだ。

契約社員の採用制度は、バブル経済が崩壊した1991年から数年後の、95年から始まった。河本氏が、制度導入の頃を振り返る。

「コスト競争の激しいグローバル化の中で生き残っていくことが難しいと判断し、さまざまなコストカットを試みた」

その流れの中で、契約社員の制度も始めた。この約20年間、ANAや日本航空(JAL)は客室乗務員を採用する際、当初の3年間は契約社員として雇い入れ、4年目を迎える際、本人の意向などを確認したうえで、希望者を正社員として受け入れるというもの。

希望者の大半が、正社員になることができる。3年の間、労働保険や社会保険、有給休暇、育児休業などの扱いは、4年目以降の正社員とほぼ同じである。

それでも、正社員雇用に切り替えるのにはいくつかの理由がある。その1つが、人材育成を強化し、早期育成を図るものだ。河本氏は、「今までも早期育成を強く心がけてきたが、これを機に若い人が伸びていくチャンスが一層、広がるようにしたかった」と語る。

これまでは、契約社員は機内業務を中心に仕事をしていたが、チーフパーサーと呼ばれる現場のリーダーになることはできなかった。今後は入社数年以内でも認められれば、それらをすることができる。

もう1つの理由が、採用競争力を強くすること。河本氏はJALがV字型回復を受け、新卒や既卒の採用を始めていることには触れなかったが、そのことも念頭にあるのだろう。もともと、客室乗務員を志す者は双方を受験する傾向がある。ANAとJALで“奪い合い”となる。

JALは現在も契約社員の制度を続ける。ANAとしては「契約社員vs正社員」の構図をつくり、差別化を図ることが、採用力の強化になると考えたのではないか。河本氏は説明する。

「今の大学生の保護者の世代は、正社員になることが多かった時代に育った。わが子が正社員になることを知れば、その会社を好意的にとらえてくださるのではないか、と願った」

一方で、懸念すべきこともある。正社員にすれば、通常はコストが増える。日本の航空会社の大きな課題は、コスト・コントロールだ。河本氏は「教育・訓練、退職者の減少と言った総額人件費という観点から対応する」と答える。

例えば、退職者が減っていくことや、教育・訓練を一層、効率よく進めることができたり、採用業務のコストを減らすことができると考えているという。河本氏が強調する。

「正社員制度を設けることが目的ではない。人材育成や採用力強化の特効薬はないと思う。さまざまな試みをしていく中の、1つが今回の制度導入となる。ユニットコスト(1座席を1キロメートル運ぶのにかかる費用)をはじめとしたコスト改革なども含め、取り組むべきことはいくつもある」

(中略)

光岡氏は、JALの人事部で新卒などの採用にも関わっていた。優秀な人材を獲得するために、応募者数の20倍ほどのエントリー者数を確保することが必要と指摘する。

「ANAは少子化が進む時代に、1万人以上のエントリー者数を維持することは難しいと判断し、目を引くように“正社員”の道を開いたのではないだろうか」

一方で、ANAが抱える高コスト体質にも触れる。航空会社のコスト競争力の指標であるユニットコストは、ANAは世界の大手航空会社の中でも相当に高く、改革半ばといえる。

光岡氏は今回、正社員雇用を始めることで発生するコストは微増と見る。

「20年ほど前の客室乗務員の平均年収は、ANAやJALは約700万円だった。その後、人事制度の改定などにより、コスト削減を図り、今は450万円ほどになった。すでに人件費の大幅な削減は終えている。現在、契約社員の年収は300万円前後と聞く。正社員として雇う場合、これに50万円ほどを上乗せするかもしれない。1600人いるならば、8億円になる。この数字ならば、大きな負担にはならないと思う」

むしろ、ANAの社風や企業体質について指摘する。光岡氏には、ANAはJALに比べ、仕事には高い水準が求められる傾向があると映るようだ。

「厳しいがゆえに、JALを追い抜くことができた。一方で、定着率が低かったのではないだろうか。そのあたりのハンドリングをどうするか。これを克服しないと、正社員化の効果が弱くなる」

さらには、JALも優秀な人材を獲得するために正社員の雇用を始めるのではないかと予測する。最後に、こう指摘した。

「世界の主な航空会社では、客室乗務員を契約社員にする動きが進む。ANAの試みは、それとは違った方向になる」

(中略)

前田氏は、「客室乗務員は機内の安全を守る、保全業務に深く関わる以上、チームワークが非常に重要。そのためにも、正社員の雇用であるべき」と繰り返し、こう続ける。

「JALは当初、契約社員を3年で雇い止めにする制度だった。私たち労働組合は安全を守るためにも、国会への働きかけを強め、運動を展開した。署名は短い間に10万人を超え、3年後の正社員化が実現された」

一方で、さらなる合理化が始まることに警戒する。JALの客室乗務員の年収は、20年ほど前の水準に戻ったと打ち明ける。10年1月、JALが会社更生法を申請した後、前田氏の年収は4割がカットされたという。

今は基本給に、業務に伴う手当(時給1000円)が上乗せされる給与形態く姿を見るのが、忍びないという。

「私が客室乗務員になった頃から、基本給は低く、それを諸手当で補う形になっていた。有価証券報告書によると、20年前、平均年収が680万円だったのが、今や450万前後。人事制度の改定もあるが、手当を削減されたり、廃止にされたことが大きい」

世界の航空会社では、客室乗務員は契約社員が増えているといった指摘には疑問を投げかける。

「正社員雇用を続ける会社も少なくない。双方は、拮抗していると私は見る。JALでも、正社員雇用を始めることを求めていきたい」






Posted by いざぁりん  at 00:04