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こちらです。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160513-00117252-toyo-bus_all&p=1
(以下は、コピーです)

2016年、羽田空港は英国SKYTRAXの国際空港評価、「ザ・ワールド・クリーネスト・エアポート」部門において1位となった。その羽田空港の清潔さの鍵を握るのは、同空港の清掃スタッフたち。700人の指導職として活躍し、羽田空港内で唯一「環境マイスター」の称号を持ち、『清掃はやさしさ』(ポプラ社)の著者である、新津春子さんにその秘密を語ってもらった。

■ 500人のスタッフが清掃に従事する羽田空港

 1日に20万人が利用する羽田空港。国内線の2つのターミナルに加え、国際線のターミナルもでき、空港の規模は年々大きくなっています。3つのターミナルで合計約78万平方メートルと、東京ドーム約17個分に相当する広大な施設です。

 この隅々までを清掃するのが私たち清掃スタッフです。第1・第2ターミナルの清掃員はあわせて約500人。清掃員の在籍者数は700人を超え、それぞれのチームに分かれ、シフトを組んで作業をしています。

 羽田空港は面積が広いだけでなく、清掃する場所がとにかく多いのも特徴です。空港の清掃というと、洗面所やトイレなどを思い浮かべると思いますが、それだけではありません。

 たとえば、リムジンバスで空港ターミナルに到着したら、その降り立った場所からすべてが清掃の対象になります。私たちが「犬走り」と呼ぶ、建物まわりの軒下部分はもちろん、手荷物用のプッシュカート、自動ドア、窓ガラス、外壁……、車路より内側はほぼすべてが守備範囲です。
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 人通りの多い場所は、早朝や夜間に清掃します。たとえば、フロア内は基本的に夜間清掃(夜の9時半から朝の4時まで)です。静電気でホコリを呼びやすいエスカレーターの手すりや周囲の壁、エレベーターの扉や床、ロビーに設置されたソファなども毎日、清掃して清潔さをキープするのが私たちの仕事なのです。

■ 羽田空港が世界一になれたワケ

 それにしてもなぜ、羽田空港が世界一になれたのでしょうか。それは、大人数の清掃員が一生懸命、清掃しているからだけではありません。羽田空港ならではのシステムのおかげだと思います。つまり、清潔さを維持するチェック体制が確立されているからです。

 大勢のお客さまが利用される場所ですから、決まった時間や回数だけでは対応できないケースも出てきます。それを放置しないで、スピーディに対応する。清掃員が予想外の作業にもスムーズに取りかかれる。その体制作りが重要なのです。

 たとえば、団体のお客さまが集合された後は、ゴミがいろいろ落ちているものです。団体のお客さまに限らず、ふと見ると、ソファまわりにスーツケースを引きずった跡が残っていたり、洗面所が思いのほか汚れていたり、コインロッカーに飲みものがこぼれて濡れているのを発見することもあります。そういう場合、少しでも早く見つけて対応することが大事です。時間が経つほど汚れが広がり、お客さまに不愉快な思いをさせてしまいます。クレームが入る前にスピーディに処理する。これが鉄則です。

 羽田空港では、清掃員とは別に、空港内を巡回して、汚れている場所をチェックするスタッフがいます。ゴミが落ちていれば自分で拾いますし、プランターの花が枯れていれば摘んできれいにします。歩きながら汚れている場所に気づいたら、即センターに連絡を入れます。「第1ターミナルの2階、S・○○のトイレの床が濡れているので清掃をお願いします」という感じです。洗面所にはすべて「S・○○」「N・○○」と番号がついています。Sが南ウイング、Nが北ウイングのことです。

 お客さまからご指摘があった場合は、近くの目標物などをお聞きします。
連絡があるとセンターから近くにいる清掃員に連絡、該当箇所の清掃をお願いします。

 連絡を受けた清掃員は、いったん持ち場を離れ、指示された場所に向かって、清掃に取りかかります。フロアの一角の目立たないところに、ひっそりと清掃用具一式を収納したカートが置いてあるので、道具を持ち歩かなくても、ほとんどの作業ができてしまいます。そして、清掃が終わればセンターに報告して、再び自分の持ち場に戻ります。報告を受けたセンターから、汚れた場所を見つけたスタッフに再び連絡して、一連の作業が終わります。

 1つの清掃に対しては、必ず次のようなチェック体制が取られます。

1.通常の清掃

2.巡回スタッフのチェック

3.汚れている箇所を発見→センターへ連絡→清掃員に連絡

4.スポット的な清掃を実施→終了後、担当エリアへ戻る

5.報告をうけて巡回スタッフが事務処理をおこなう

6.作業完了

 この繰り返しが清潔な空港を保つ原動力になっています。

 また、選任の巡回スタッフ以外でも、課長以上など、一定の役職以上についている社員は、自分自身の裁量で随時見回ることになっています。私もそうですが、自分の目でチェックしていないと、責任が持てません。どういう状態がベストなのか、どんな素材が使われ、どういう場所が汚れやすいのかがわからないからです。

 毎日とは限りませんが、仕事の合間を見つけながら、可能な時間を巡回にあてて、清掃が行き届いていない部分がないか、しっかりとチェックします。すぐ対応できない場所は、写真を撮っておき、センターや協力会社の人たちと共有して、清掃スケジュールの中に組み入れます。

 清掃に終わりはありません。地味ですが、この蓄積と繰り返しが大切です。スタッフ同士の連携プレーがきれいな空港を支えているのです。

■ 効率的な清掃方法で作業する

 このシステムは長年かけて作りあげてきたものです。私が入社したころ、国内線は1つのターミナルだけでしたし、国際線ターミナルは2階建の小規模なものでした。人数も少なく、情報の共有が比較的しやすかったのです。

 しかし、ターミナルの拡張とともに、清掃箇所が増え、協力会社のスタッフもどんどん増えていきました。きちんとした体制をつくり、作業手順や注意事項をマニュアルに落とし込んでいかなければ、清掃のクオリティを維持していけません。新しいターミナルがオープンするときは、とても大変でした。ある程度工事が進むと、作業員が洗面所やトイレを使えるようになりますから、私たち清掃員が事前に見学します。そのときに各施設の写真を撮って、素材や構造などを調べ、掃除の仕方を決めます。どういう洗剤や道具を使い、どういう手順で清掃するか。


 どの時間帯に清掃し、どうスタッフを配置するか。この準備がもっとも重要で、正式オープン前にすべて決めておかなければなりません。たとえば、人造大理石、タイル、木のフローリング……床材ひとつとっても、対応可能な洗剤が違います。適切な洗剤を使わないと素材を傷めてしまいます。

■ 空港の清掃という難しさ

 空港の清掃には技術面だけでなく、オフィスビルとは違う難しさがあります。まず、基本的にお客さまがいらっしゃるときに清掃をおこないます。もちろん、早朝や夜間の作業もありますが、利用される洗面所、ロビーなどの清掃は日中に実施しています。つまり、お客さまの目に触れることを前提として、作業をしなければなりません。きれいになりさえすればOKというわけにはいかず、「サービス業」としての清掃を意識する必要があります。

 たとえば、身だしなみもその1つです。清掃員の制服は決まっていますが、だらしない着こなし、前をはだけていたり、アクセサリーをじゃらじゃらつけたりするのはNGです。女性は髪の毛が目にかかったり、落ちてこないように、ロングヘアの場合は結んだり、ピンで留めたり、きちんとしたスタイルにするのが基本です。香水も避けなくてはいけません。アレルギーの人はわずかなにおいにも反応し、くしゃみが止まらなくなるケースもあります。たとえ作業着であっても、清潔さとお客さまに対する配慮とを忘れてはいけないのです。

 また、動作や表情にも気をつける必要があります。不機嫌そうに仕事をしていたのでは、せっかく楽しい気分で旅行にお出かけになるお客さまの気持ちに水を差してしまいます。作業に夢中になっていると、周囲のことが見えなくなりがちです。なるべく笑顔で、お客さまの邪魔をしないように気をつけて清掃する。
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 できれば身のこなしも軽やかに。「やさしい清掃」とは、見た目にも心地よいこと。ある程度、パフォーマンス的な要素も意識する必要があります。

■ お客さま満足を考えながら仕事を

 清掃員はお客さまによく空港のことを尋ねられます。入社時には全員に「よくある質問」という小冊子が渡されます。清掃員であっても、それにしっかり目を通し、お客さまをご案内できるようにしておくのも、仕事の1つです。

 ある時、年配のご夫婦がとても困った様子で私に「ANAの搭乗口にはどうやって行けばよいかわからない」と声をかけました。

 羽田空港は、第1旅客ターミナルが日本航空(JAL)系列、第2旅客ターミナルが全日空(ANA)系列と分かれています。ANAにお乗りになるのであれば、第2ターミナルになりますが、ここは第1ターミナル。残念なことに逆側に出てしまわれたようです。電車やモノレールの改札口を間違えなければ迷いませんが、羽田に慣れていないお客さまの場合、そういうケースが少なくありません。

 反対側に出ても、地下でつながっています。いったん下のフロアにいけば、時間はかかるものの、目的の場所に到着できます。しかし、道順を説明して、お2人だけで向かっていただくのも心配でした。清掃の途中だったので迷いましたが、仲間に連絡を入れ、第2ターミナルまでご一緒することにしました。荷物もお持ちですし、また、迷子になったりするとお気の毒だと思ったからです。しきりに恐縮されましたが、とてもほっとしたご様子でした。無事に向こうに送り届けると、「ありがとう」と何度もお礼を言われ、やってよかったと思いました。

 清掃員によっては、「お客さまをご案内することは自分の仕事ではない」
という人もいます。確かに私たちの本業は清掃です。しかし、何のために清掃をしているのでしょうか?  働く側にとっては、生活のため、おカネのためかもしれませんが、そもそもお客さまに気持ちよく空港をお使いいただくために、会社は清掃員を雇っているのです。汚れた場所をきれいにするのは「気持ちのよい空港」にするための手段の1つ。服装、身だしなみ、言葉遣い、お客さま対応。すべてクリアできてこそ、プロの清掃員だと私は考えています。

 自分のステージを美しくみがきあげると同時に、いつでもお客さまをご案内でできるようにしておく。それもまた、「優しさ」のひとつです。お客さま優先で行動するのは当たり前だと思うのです。



Posted by いざぁりん  at 00:23