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ベーシックインカムを、日本でも、導入すべきです。
http://diamond.jp/articles/-/84311
(以下は、コピーです)
欧州で起きつつある
ベーシックインカムのブーム

いま注目を集めるフィンランドのベーシックインカム導入。日本も導入すべきか、否か

 先月、フィンランドが今年からベーシックインカム(政府が国民に最低限の生活を送るのに必要な額の現金を支給する最低所得補償の制度)を導入し、540万の全国民に月額800ユーロ(約10万円)を支給するというニュースが流れました。

 実際には、まず予備調査を行った上で、その結果を踏まえて今年11月までに最終決定が行なわれるようですが、本当に導入される場合は、現在フィンランド国民に提供されている様々な社会保障サービスが廃止され、このベーシックインカムに一本化されることになります。

 ちなみに、一般的にベーシックインカムのメリットとしては以下の3つの点が言われています。

・所得が増えてもベーシックインカムの受給額は減少しないので、低所得者が頑張って所得を増やすと公的支援が減少してしまい貧困状態から抜け出せないという“貧困の罠”を避けることができる

・年金や生活保護などの社会保障支出をベーシックインカムに一元化することで、行政の無駄を削減できる

・ベーシックインカムで最低限の生活が保証されれば、企業年金など福利厚生の水準が低い非正規雇用の仕事にも就きやすくなるので、雇用情勢の改善に役立つ(実際、フィンランドの失業率は約10%と過去15年で最悪の水準にある)

 このようなメリットがあるからこそ、欧州ではベーシックインカムがちょっとしたブームになってきた感があります。

 実際、フィンランド以外でも、オランダ第4の都市ユトレヒトでは今年から試験的に導入することを決めています。また、ドイツのベルリンでは、2014年から民間人がクラウドファンディングを活用して、抽選で選ばれた人たちに月額1000ユーロを1年間与えるという“マイ・ベーシックインカム・プロジェクト”が行なわれています。更には、スイスではベーシックインカムの導入の可否について今年2月に国民投票が行なわれる予定です。

日本では実行できるのか?
厳しい財源の問題

 となると、日本でもベーシックインカムを導入すべきという意見が出ておかしくありませんし、実際に経済学者の中でもそうした主張を始めている人もいます。

 確かに行革の観点からは大きなメリットがありそうです。日本の社会保障は、年金、医療、介護、生活保護、保育と縦割りになっており、それぞれの分野に大きな既得権益が存在する他、政府や自治体には膨大な数の職員がいるので、社会保障をベーシックインカムに一元化できれば、かなりの行革となることは間違いありません。

 しかし、財源の面からはかなり厳しいと言わざるをえません。例えば、年金生活世帯(夫婦2人)の平均消費支出は約24万円/月なので、毎月12万円を全国民にベーシックインカムとして支給すると仮定したら、なんと年間で173兆円の財源が必要となります。社会保障給付費(年金、医療、介護・福祉などの合計)が117兆円であることを考えると、とても賄えません。

 ちなみに、フィンランドでも、毎月800ユーロを全国民に給付したら年間520億ユーロが必要となり、今年のフィンランド政府の歳入490億ユーロよりも多くなってしまうので無理だ、と批判されています。

 そこでフィンランドでは、全国民ではなく大人にのみベーシックインカムを給付するという構想もあるようですが、その場合には、例えば夫婦2人の世帯ならば問題ないけど、3人の子を持つシングルマザーの世帯は悲惨なことになるので、こうしたアプローチは現実的ではないでしょう。

 即ち、財源の問題からベーシックインカムの導入は難しいという結論にならざるを得ません。

働く意欲が落ちる、は本当?
労働インセンティブの問題

 ただ、ベーシックインカムについて考える場合、財源よりも憂慮すべき問題があります。それは労働インセンティブへの影響です。ベーシックインカムで最低限の生活に必要な収入が保証されたら、働く意欲が落ちるのではと考えるのが自然だからです。

 しかし、2014~15年のドイツ・ベルリンでの実験、更には1970年代にカナダのある町で行なわれた実験からは、ベーシックインカムの支給は労働インセンティブを落とさないという結果が報告されています。ドイツで実験プロジェクトを行なっている主催者は、将来的にデジタル化が多くの仕事を人間から奪う可能性が大きい中で、将来不安に苛まれることなく安心して生活でき、学校に通って新たなスキルを身につけることもできるなど、メリットが大きいと主張しています。

 だからこそ、フィンランドでも、ベーシックインカム導入賛成論者は、ベーシックインカムは労働インセンティブに影響を及ぼさないと主張しているのですが、それが日本にも当てはまるかとなると、ちょっと微妙ではないでしょうか。

 というのは、フィンランドはもともと積極的労働政策を展開している国だからです。具体的には、企業は従業員の解雇を容易にできる一方で、職業訓練や失業手当などにより、労働者はスキルアップと転職を行なえるようにしています。労働者の権利は守りながらも、転職は当たり前だし働かざるもの食うべからずという、流動性が高く競争的な労働市場を作ることで、生産性の低い産業から生産性の高い産業への雇用のシフトを後押ししているのです。

 こうした労働市場には、ベーシックインカムの仕組みはよくフィットするはずです。最低限の生活が保証されれば、流動性が高い労働市場の中で自分の将来にあった動きを取りやすくなるからです。

 一方で、日本の労働市場は非常に硬直的です。未だに大企業は新卒一括採用、終身雇用に拘り、正規雇用と非正規雇用では給与水準も福利厚生も大きく異なり、また人生のステージに応じて正規と非正規を行ったり来たりすることも困難です。更に言えば、職業訓練の機会も、企業が主に正規雇用に提供するOJTか、ハローワークなどの公的機関が提供するベーシックな内容のものくらいしかなく、スキルアップを通じた転職が難しい国と言わざるを得ません。

 このように硬直的な労働市場では、多少頑張っても低賃金の状況から脱することはなかなか難しいと多くの人が思ってしまっているので、そこでベーシックインカムを導入したら、低賃金の人ほど働くインセンティブを失うことになりかねないのではないでしょうか。

やはり労働市場の改革が不可欠

 私は基本的にはベーシックインカムの考え方に賛成です。日本の社会保障は縦割りがひどく、その中で既得権益やら天下りやら膨大な人員を抱えていることを考えると、社会保障サービス全体をもっと簡素化して、無駄をできるだけ省くことは不可欠だからです。

 それでも、ベーシックインカムの導入を目指すべきかと問われたら、労働市場改革がほとんど進まずに労働市場が硬直的な中では、労働インセンティブの観点から悪影響の方が大きくなると考えられるので、反対と言わざるを得ません。

 こう考えると、労働市場の改革は経済・産業・企業・個人とあらゆる主体の生産性を高めるために不可欠ですが、同時にベーシックインカムを巡る考察から分かるのは、財政再建に必須の社会保障サービスの簡素化・効率化を進めるためにも不可欠だということです。

 安倍政権はおそらく今年夏の参院選までは大きな改革は進められないと思いますが、それでも、労働市場の改革を早く経済政策の最優先課題にすべきではないでしょうか。



Posted by いざぁりん  at 01:55