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http://digital.asahi.com/articles/ASJ2Y1S2SJ2YUTFL001.html?rm=911
(以下は、コピーです)

■介護現場 虐待生まぬために

 川崎市の有料老人ホームで入所者3人が転落死した事件で、うち1人の殺人容疑で逮捕された元職員は「夜勤など仕事のストレスがあった」という趣旨の供述をしています。介護現場で職員たちは、どんな状況に追い込まれているのか。虐待を防ぐ手立てはないのか。2回にわたって考えます。

 介護の仕事で特に負担が重いとされるのが夜勤だ。2月下旬に東京都内の特別養護老人ホームを訪ねた。

 夜勤の開始は午後4時45分。介護福祉士で15年目の男性主任(35)は、すぐ夕飯の準備にとりかかった。「お金がない」と探し回る人や「どこに行くんだよ!」と叫ぶ入所者に対し、主任は優しく声をかけて食堂に連れて行く。

 食事が終わると就寝に向けた介助が始まる。寝間着に着替えさせ、歯磨きを手伝い、オムツ交換や薬の手配……。1人ずつ寝かせて、一段落したのは午後10時前だった。

 夜勤は2時間の仮眠を含めて17時間。午後8時半から翌朝7時までは、職員2人だけで1フロア47人を担当する。

 排泄(はいせつ)の介助は、入所者が寝ている間も続く。オムツ交換は朝まで数時間おきに計4回。その間も職員を呼ぶコールの対応に追われる。

 午前3時半、部屋で転倒したという男性(85)から呼び出しがあった。「救急車を呼んでもらえないか」。担当の看護師に連絡し、救急搬送することに。仮眠に入ったばかりのもう1人の男性職員(39)を呼び戻し、手分けして病院や家族に電話を入れた。

 電話連絡に追われる最中も入所者のSOSは響く。「助けてくれー」という叫び声に駆けつけると、女性が床に座り込んで「なんでこんなんになっちゃったんだろう。分からん」と声をあげていた。

 午前4時半に救急隊が到着し、主任が同行。残った職員が1人で対応することになった。明け方が近づくと、コール数は急増。トイレでは便の臭いがたちこめ、男性がうめき声を上げている。汚れを拭き取り、着替えさせる間もコールは鳴り続ける。「順番に回っていますから、お待ち頂けますか」。そう繰り返しながら、職員はこう漏らした。

 「わかってはいるけど、どうしてもイライラしてしまう。先が見えない」

 1時間後、主任が病院から戻ってきた。「こうした搬送は数カ月に1度ぐらいあります」。その後、男性は頸椎(けいつい)骨折だったとの連絡が入った。

 主任は「やりがいの多い仕事」と話す。一方で、「『人の役に立ちたい』と思って仕事を始めたのに、これだけ時間に追われていると、人の役に立つどころじゃないと感じる職員は多い」とも明かす。

 国は入所者3人に対し介護職員1人という配置基準を設けている。この基準でシフトを組むと人手が足りず、この施設でも夜勤は2人態勢にならざるを得ないという。虐待防止の研修会を開いても、日々の仕事で出られない人が出てしまう。

 この日、夜勤中の呼び出しコールは90回を超えた。

■労働時間の上限、守られない現場

 複数の介護事業所の勤務実態を見てきた社会保険労務士の熊谷祐子さんは、介護現場で労働時間の上限が守られていないことを問題視する。

 労働基準法による法定労働時間の上限は週40時間だが、シフトが厳しく、上限を超えるケースが多いという。新人を1人で勤務につかせられないことや、急な病欠で代わりに出勤した職員が代休を取りづらい事情も背景にある。

 少人数態勢の夜勤で仮眠がとれなかったり、夜勤と日勤を繰り返したりして生活リズムが崩れ、うつ病など精神的トラブルを抱える職員も少なくないという。労働組合「日本介護クラフトユニオン」の調査では、働く上での不安や不満が「ある」と答えた職員は8割前後に上った。

 熊谷さんは「労務管理が正しくなされているか、社会保険労務士など外部の専門家の目でチェックすることが必要だ」とした上で、人事評価制度を整備する必要性も強調する。将来の目標や昇給について上司と話し合う機会をつくることで、不安や不満を把握できる可能性があるためだ。

■施設管理者らの8割、虐待を懸念

 危機感は、介護事業者にも広がっている。

 全国有料老人ホーム協会などでつくる「高齢者住まい事業者団体連合会」は昨年11~12月、経営者や管理者向けの虐待防止研修を実施。約2100人が参加した。

 参加者に実施したアンケート(回答数1815人)では、236人(13・0%)が「虐待は起こっていると思う」と回答。「起こるかもしれない」が7割近くだった。

 「起こらないと思う」と答えた人も258人(14・2%)いたが、同連合会の長田洋事務局長は「虐待が『起こらない』と答えたところを心配している。虐待は1件も起きてはならないが、起こるかもしれないという認識で取り組む必要がある」と話す。

 過去1年間の虐待防止研修の実施状況を複数回答で聞いたところ、「各事業所で職員向けに実施」が54・8%、「全社で管理者向けに実施」が14・8%だったが、一方で「実施していない」と答えた人も2割ほどいた。(中村靖三郎、井上充昌、十河朋子)

■人員配置基準の見直しを

 〈介護問題に詳しい立教大の服部万里子講師(高齢者福祉論)の話〉 川崎の事件は、あってはならない異常なことだ。ただ、なぜ起きたのかを考えると、単に個人の問題だけでは片付けられない。経験の乏しい介護職員が重度や認知症の人などと向き合わざるを得ない中で、追い詰められ、ストレスがたまり、どうしていいかわからなくなってしまう環境に無理がある。職員の処遇改善のほか、現場の負担を軽減できるような人員配置基準の見直しが必要だ。



Posted by いざぁりん  at 02:01