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日米安保を、破棄しましょう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45283
(以下は、コピーです)
そもそも安倍政権は、なぜ「憲法違反」のリスクを冒してまで、安保法案の成立にこだわったのか。その背景には、同盟国であるアメリカの事情と、日本の事情という「二つの事情」が重なっていたように思う。

「オフショア・バランシング」という概念

まずは、アメリカの事情から見ていこう。

すべては、2011年8月、アメリカ連邦議会で可決成立した予算管理法に始まる。この法律によって、それまでは「聖域」と言われてきた国防費を、以後の10年間で4,870億ドル以上、削減しなければならなくなった。これは、10年間で毎年平均8%近い削減額となる。

予算管理法の制定を受けて、オバマ大統領は翌2012年1月5日に、「全世界におけるアメリカのリーダーシップの堅持――21世紀の国防戦略の優先事項」を発表した。要は、国防費が大きく削減される中で、今後10年間、どうやって世界における「覇権」を維持するかという「国防戦略の指針」を示したのだった。

この時、アメリカは、東アジアの同盟国である日本と韓国に対して、次のような巧妙な説明をした。

「今回の国防戦略の指針の最大の柱は、リバランス(Rebalance)にある。21世紀の最初の10年間は、前任のブッシュJr政権が、アフガニスタン戦争とイラク戦争を起こして、主に中東にアメリカ軍の主力戦力を配備した。

ところがオバマ政権は、アフガニスタンとイラクからアメリカ軍を撤退させる方針だ。そして撤退させた主力戦力を、東アジアに移動させる。なぜなら東アジアでは台頭する中国の脅威が増し、北朝鮮はますます危険な存在になってきているからだ。

これが、アメリカの戦力のバランスを変える、リバランスだ。だから東アジアの同盟国は、今後10年にわたって、アメリカ軍が東アジア地域に集中的に防衛力を配置することで、これまで以上の地域の安定を得られるのだ」

実際には、この時の国防戦略の指針が示したのは、「オフショア・バランシング(Offshore Balancing)」という概念だった。

1991年に旧ソ連が崩壊して以降の20年間は、アメリカは唯一の超大国として、世界中の治安維持を図る「世界の警察」の役割を果たしてきた。

ところがそのことが重い負担となってきたため、予算管理法を成立させて、国防費を大幅に切り詰めることにした。そこで行き着いたのが、オフショア・バランシングという概念だ。

オフショア・バランシングとは、簡単に言えば、世界中に展開しているアメリカ軍を徐々に撤退させ、その代わりにアメリカの同盟国、もしくは友好国に、それぞれの地域を防衛させるようにする。それによって、アメリカ軍がいた時と同様に、敵対国の台頭を防いでいくという概念だ。

東アジアについて言えば、日本と韓国に展開しているアメリカ軍を徐々に撤退させる。その代わりに韓国には、敵対国である北朝鮮の脅威を防ぐべく防衛してもらう。一方日本には、同じく敵対国である中国の台頭を防ぐべく防衛してもらうということだ。

韓国の場合、そもそも1953年の朝鮮戦争停戦以来、北朝鮮の脅威を最大限考慮した国防体制を取ってきている。問題は、憲法第9条で「戦争の放棄と武力の放棄」を謳っている日本だった。

日本が憲法を改正するか、もしくは憲法解釈を拡大して「戦争と武力」を容認してもらわなければ、東アジアにおけるオフショア・バランシングは、いつまでたっても成立しない。

そのためオバマ政権は、2012年暮れに誕生した安倍政権に対して、早期の憲法改正か、もしくは憲法解釈の変更を、陰に陽に迫ってきたというわけだ。

安倍首相とオバマ大統領の密かな「取引」

次に、日本国内の事情について考えてみよう。

2011年暮れに北朝鮮の金正日総書記が死去したことと、2012年11月に強硬派の習近平が中国共産党のトップに就任したことで、日本の「仮想敵国」は事実上、北朝鮮から中国へとシフトした。

それどころか、2012年9月11日に日本が尖閣諸島を国有化したことで、習近平政権は尖閣諸島の奪取を、密かに海軍の主要目標の一つに掲げた。そのため日本は、現在実効支配している尖閣諸島を、近未来に中国人民解放軍に奪取されるかもしれないという恐怖に駆られたのだった。

そうした中、安倍政権には、二つの選択肢があった。

一つは自衛隊を増強し、日本が独自に尖閣諸島を防衛するというものだ。この場合のメリットは、現行の法律のままで対応可能なことだ。敵が攻めて来たら反撃するという個別的自衛権は、国連憲章ですべての加盟国に認められている権利だからだ。

だが、仮に近未来に尖閣諸島を巡って日中戦争になった場合、本当に自衛隊が人民解放軍に勝てるのかという不安があった。人民解放軍の兵員は自衛隊の約10倍で、核兵器や原子力潜水艦、それに空母まで保有している。万が一、尖閣諸島を奪われた場合には、次は沖縄を取られるのではという危機感もある。

もう一つの選択肢は、これまで以上に日米同盟を強化し、とことんアメリカ軍に守ってもらうというものだ。この場合のメリットは、世界最強のアメリカ軍を前にすれば、いくらアジアで台頭する中国軍といえども、容易には尖閣諸島に手出しができないだろうということ。

逆にデメリットは、日本は単に尖閣防衛のための日米同盟強化のつもりだが、アメリカは、「世界における日米軍一体化」を求めてくるということだった。特に、中国と東南アジアの国々が領土を争っている南シナ海に、「日本がアメリカの代わりに守ってくれ」と、自衛隊派遣を希望してくることが予測できた。

これを可能にするためには、「同盟国のアメリカ軍が攻撃されそうだから、日本政府は自衛隊を派遣する」という集団的自衛権の適用が不可欠となる。そして集団的自衛権を適用するには、憲法を改正するか、もしくは安保法制を再構築して、「憲法の超法規的拡大解釈」を行うしか方法はなかったのだ。

安倍政権が選択したのは、まさに後者だった。つまり、「世界におけるアメリカ軍との一体化」という道を進んでいくことにしたのである。

2014年4月23日から25日まで、オバマ大統領が国賓として来日した際に、安倍首相とオバマ大統領は、密かに「取引」を成立させたように思えてならない。

それは、安倍首相は2015年夏までに安保法制を成立させて、集団的自衛権を適用し、世界中で日米軍一体化が進められるようにする。その代わりオバマ大統領は、「尖閣諸島はアメリカ軍が防衛する」と宣言するというものだ。

実際、オバマ大統領は、4月24日の日米首脳会談後の記者会見で、そのような主旨の発言をし、安倍政権及び日本国民をひとしきり安心させた。換言すれば、その時点で、2015年夏までの安保法案成立は、決まっていたのだ。安倍政権は、予定より1ヵ月延びたものの、何とか9月に成立にこぎつけたというわけだった。

日本政府は、「琉球」と「米軍基地」のどちらを選ぶのか

安倍政権は、というより安倍政権に導かれたわれわれ日本人は、ついにルビコン河を渡ってしまった。今後、われわれは一体、どのような「風景」を見ることになるのだろうか。

そのカギを握るのは、安保法制の影に隠れて派手に報じられることもなくなった普天間基地の移転問題である。

安倍政権は9月9日まで、1ヵ月にわたって、移設先の名護市辺野古における工事を全面的に中断し、沖縄県と計6回にわたって集中協議を進めてきた。内閣府は来年度予算の概算要求で、3429億円もの沖縄振興費を計上しているが、翁長雄志知事率いる沖縄県は、「ダメなものはダメ」と突っぱねる。両者の議論は、相変わらずの平行線だった。

このまま日本政府と沖縄県がチキンレースを続ければ、どうなるか。まず翁長知事は、今週中にも、前任の仲井真弘多知事がサインした辺野古の埋め立て承認を取り消すだろう。だが政府は、この取り消し措置は無効だとして、辺野古沖の海底調査を再開させ、10月には辺野古の飛行場工事を始める……。

こうして日本政府と沖縄県が仇敵になると、その先にあるのは、スコットランド方式、すなわち沖縄県民による「独立のための県民投票」であろう。

「そんなバカな?」と思うかもしれない。だが9月15日には、「沖縄独立」のためのバイブルになるであろう『琉球独立宣言』(本稿末尾の書評参照)という物騒なタイトルの本が出版される。著者は、龍谷大学教授で、2013年に設立された琉球民族独立総合研究学会の共同代表である松島泰勝氏である。


松島泰勝『琉球独立宣言 実現可能な五つの方法』

松島教授には先日、ゆっくり話を聞いたが、次のように述べていた。

「日本政府がこのまま辺野古の新基地計画を進めていくと、『琉球』(松島教授は、1879年に琉球国が日本の明治政府に不当に併合されたとして、以後の沖縄という呼び名を拒否している)は、『独立』というカードを切って、自らの道を歩もうとするでしょう。

つまり日本政府は、『琉球』と『米軍基地』のどちらを選ぶのかが問われているのです。私はこの『独立カード』が、単なる幻想や夢想ではなく、リアルな選択肢であると考えているのです」

そもそも、日本政府が普天間飛行場の名護市辺野古への移転を急いでいる最大の理由は、尖閣諸島を防衛するためである。その意味で、安保法制と普天間飛行場の移転は、双子のような関係にあるのだ。

だが、日本政府が辺野古への移転を強行することで、沖縄県民は独立志向を強めていく。尖閣奪還を目指す中国にとっては、これほど好都合なことはない。

沖縄が独立すれば、松島教授も新著で書いているように、琉球国は過去と同様、中国の朝貢国となる。そうなると、尖閣諸島も沖縄県の一部なのだから、一緒に中国の「朝貢島」になるというわけだ。

日本政府とすれば、そんなことになれば、まさに本末転倒である。そしてこうしたシナリオを避けるためには、最後は日本政府の方が、妥協するしかないのである。

「移転先の条件は沖縄から65マイル以内」は事実無根

過去に最も沖縄県民に妥協した政権と言えば、2009年9月に自民党からの政権交代を果たした鳩山由紀夫民主党政権だった。鳩山首相は、アメリカ軍普天間基地の沖縄からの撤退を公言していたからだ。

そこで、鳩山政権に起こっていた普天間基地の議論を、もう一度検証してみた。そこに今後のヒントが隠されていないものかと思ったのだ。

鳩山政権は、2009年12月28日に、基本政策閣僚委員会の下に、「沖縄基地問題検討委員会」を立ち上げた。この検討委員会は、翌2010年3月8日まで、計8回開かれているが、その後は曖昧模糊としてしまった。実際には、県外移転のいろんな代替案を検討したが、うまくいかなかったのである。

その結果、鳩山首相は同年5月4日、沖縄県を訪問。仲井間知事に謝罪した上で、改めて沖縄県内への移転を要請した。その後、5月26日の日米防衛相会談、5月28日の日米電話首脳会談を経て同日、2プラス2の共同発表で、再び辺野古移設案に逆戻りしてしまった。

この時、福島瑞穂大臣が閣議決定の署名を拒否し、社民党が連立を離脱。6月2日には、鳩山政権そのものが崩壊してしまった。

そんな鳩山元首相は先週、すなわち2015年9月6日に法政大学で行われたシンポジウムに参加し、当時のことを、次のように述懐している。

「当時の外務官僚と防衛官僚が、普天間基地の移転先は辺野古しかないとリードした。アメリカ側から、『移転先の条件は沖縄から65マイル以内』と示されたというのだ。だがこれは事実無根で、外務官僚と防衛官僚が、一度決めた辺野古移転を蒸し返されては困るから、アメリカ側の意向を忖度して、移転先は辺野古しかないとリードしたのだ」

私は先週、鳩山首相の後を継いだ菅直人元首相にお目にかかり、話を聞いた。菅元首相は次のように述べた。

「辺野古以外の代替地を検討したのは、前任の鳩山首相だった。鳩山首相は様々な候補地を検討したが、いずれも地元の合意ができなかった。そして結局、その責任を取って辞められたのだ。私はそんな鳩山政権を引き継いだわけだが、私の時代においても、ふさわしい代替地は国内に探せなかった」

菅元首相の言い方から推測するに、前任の鳩山首相のように「虎の尾」を踏まないよう、普天間問題を先送りしようとした。

実際、菅政権の時代になると、尖閣沖での中国船の海上保安庁の巡視船への衝突問題や、東日本大震災が起こったりして、普天間基地問題は「置き去り」にされてしまった。つまり、やはりヒントがあるとすれば、それは鳩山政権時代に検討したものの中にあるということだ。

安倍政権は「第2のルビコン河」を渡るのか

再び鳩山政権時代の議論を調べていくと、第1回目の沖縄基地問題検討委員会が開かれた翌日の2009年12月29日に、当時の鳩山政権のドンと言われた小沢一郎民主党幹事長が、興味深い発言をしていることに気づいた。以下の二つの記述は、ともに毎日新聞からの引用だ。

〈 民主党の小沢一郎幹事長は29日夜、東京都内で開いた与党3党の幹事長・国対委員長の忘年会で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について「(同県宮古島市の)下地島に使っていない空港がある」と述べ、現行計画に基づく米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)に代わる移設先として、下地島を検討すべきだとの認識を示した。 〉

〈 民主党の小沢一郎幹事長が29日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移転先として下地島(同県宮古島市)に言及したのを受け、政府・与党で作る沖縄基地問題検討委員会の検討対象となる可能性が出てきた。

(中略)北沢俊美防衛相も同日、記者団に「小沢氏の意見も協議の大きな課題にはなる」と述べる一方、「キャパシティの問題がある」と否定的な姿勢も示した。鳩山由紀夫首相は記者団に「検討委の議論に委ねている」と述べるにとどめた。 〉

下地島とは、沖縄県宮古島市にある小島で、沖縄がアメリカから日本に返還された翌年の1973年に、3000mの滑走路を持つ飛行場の建設が始まった。そして1980年から那覇空港との間に、南西航空の定期便が就航したが、1994年に利用客の低下により運休となった。

私は先週、2009年当時に防衛省の最高幹部の一人だった人物に会って、話を聞いた。その人物は次のように証言した。

「実は多くの代替地の中で、下地島はベストの選択だった。下地島のメリットは、尖閣諸島まで190㎞しか離れていないこと(中国大陸からは380㎞、那覇からは415㎞)、近くに密集した住宅街がないこと、そして何よりすでに飛行場が存在しているので、新たに建設する必要がなかったことだ。

だが、この案に『待った』をかけたのが、沖縄県の地元の建設業界だった。辺野古の建設で莫大な利益を得るという目論見が雲散霧消してしまうからだ。それで小沢幹事長も一度はブチ上げたものの、その後すぐに黙ってしまった」

おそらく、安保法制というルビコン河を今週、渡ろうとしている安倍政権に、ためらいはなかろう。安保法制が成立したらすぐにも、6年ぶりに下地島への移転の検討を始めるのではなかろうか。そして、この移転を決める時が、「第2のルビコン河」を渡る時となる。

2度の渡河を経た後には、日米軍と中国軍が尖閣を挟んで対峙するという緊迫した東アジアの「風景」が広がっているに違いない。



『琉球独立宣言』
松島泰勝著(講談社、税込み745円)

本文でも述べたように、9月15日に大変「物騒な本」が出る。第1章から第5章まで、「もう独立しかない!」「どのように独立するのか」「そもそも琉球の歴史とは」「独立したらどうなる?」「琉球独立宣言」と、大変物騒な文言が並ぶ。
だが、これは単なる「絶叫の書」ではなく、大学教授が書いた大変学問的な本である。実際に読んでみて、目から鱗の記述も多かった。安倍首相にプレゼントしたら投げ捨てるかもしれないが、この秋、同書を読むと、普天間基地問題に対する考え方が深まることは請け合いだ。




Posted by いざぁりん  at 01:33