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こちらです。
http://mainichi.jp/shimen/news/20151009ddm003040030000c.html
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全国の児童相談所(児相、207カ所)が2014年度に対応した児童虐待件数は前年度比20・5%増の8万8931件(速報値)で、調査を始めた1990年度から24年連続で増加した。虐待から子どもたちを守る児相の職員1人あたりの仕事量は増え続け、現場では「もう限界」との悲鳴も上がる。専門家は「虐待に対応する仕組みを根本的に見直す時期にきている」と指摘している。

 ◇児相、増え続ける負担

 「本当に手いっぱいの状況。子どもを守ろうという職員一人一人の責任感が現場を支えている」。名古屋市中央児童相談所の白石尚・相談課主幹(55)は語る。

 名古屋市では2010年度に833件だった児童虐待の対応件数が、14年度には1969件と倍増した。その一方、現場で対応の中核を担う児童福祉司は45人(10年度)から66人(14年度)への増員にとどまり、1人にかかる負担は増している。

 多くの職員が1人で60ほどの家庭を受け持つ。平日は学校や行政機関などとの連携に追われ、休日返上で保護者面接や家庭訪問にあたらざるを得ない。支援する家庭の都合に合わせるため、自分のスケジュールさえなかなか見通せない。問題が親権停止の審判など法的な手続きに発展する可能性もあるため、経過を逐一記録するなど大量の資料作成も必要。全国の児相に共通する問題だ。

 厚生労働省の専門委員会が8日公表した13年度に虐待死した子ども36人の分析結果にも、職員の多忙さが表れている。死亡した子どもを担当した職員33人の平均受け持ち件数は109・1件。200件を超える事案を受け持っていた職員もいた。虐待だけでなく、親が離婚したり失踪したりした子どもの保護など多様な問題にも対応しなければならず、常に仕事に追われているのが現状という。

 虐待を巡る制度変更が職員の多忙さに拍車をかける。厚労省は07年、虐待通報から48時間以内に安否確認をする「48時間ルール」を決めた。13年8月には虐待を受けた子どものきょうだいも「心理的虐待」を受けたとみなすよう厚労省が指針を改定し、児相が調査するようになった。元児童福祉司の男性は「業務記録を記載する余裕がない。48時間ルールの対象に心理的虐待も加わり、人手が追いつかない」と打ち明ける。

 職員の精神的疲労も課題だ。虐待を認めない保護者との間では時に激しいやりとりになるといい、疲弊する職員は少なくない。

 一方、現場では工夫も始まっている。名古屋市は児相職員をバックアップするため、弁護士を公募し、4月に橋本佳子弁護士(30)を主幹として採用した。児相に配置され、法律の専門家として、虐待のため保護者から児童を一時保護する「緊急介入」にも立ち会い、保護者に分かりやすく説明する役割などを担う。橋本弁護士は「虐待がある家庭には両親の離婚や貧困などの問題を抱えている場合が少なくない。さまざまな問題を考慮し、どうすれば法的に適切で最大限の支援策が組めるのか、確認しながら対応している」と話す。白石主幹は「悩むケースは必ず橋本弁護士に相談している。確実に職員の負担が減った」と歓迎している。【岸達也、古関俊樹】

 ◇拡大する家庭の孤立

 全国の児童相談所が対応した児童虐待は2009年度は4万4211件で、わずか5年で2倍になった。主な要因の一つに虐待として扱う対象の広がりがある。

 虐待を受けた子どものきょうだいも心理的虐待を受けたとみなす13年8月の厚生労働省の指針改定もその一例だ。13年度の心理的虐待は2万8348件(38・4%)になり、統計を取り始めた1990年度から23年連続で最も多かった身体的虐待、2万4245件(32・9%)を初めて上回った。

 また、04年の児童虐待防止法改正で、親が子どもの前で配偶者に暴力を振るう「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」も子どもへの心理的虐待になるようになった。全国の警察による通告件数は12年は5431件だったが、14年は1万1669件と2年で倍増した。

 社会福祉法人子どもの虐待防止センター(東京都世田谷区)理事長の松田博雄医師は「4〜5年前から心理的虐待の通告が増え、全体の相談対応件数を押し上げている。身体的虐待やネグレクトの割合が圧倒的な欧米ではみられない特徴だ」と分析する。そのうえで「その後の調査で深刻な虐待が判明し、早期の対応につながるケースもある。件数の増加をマイナス要因とだけみるのは誤りだ」と指摘する。

 一方、虐待増加の背景に、所得格差の拡大や家庭のあり方、環境の変化を指摘する専門家もいる。元大阪市中央児童相談所長の津崎哲郎・関西大客員教授(児童福祉論)は「所得格差の拡大があり、精神疾患を抱えたひとり親や子連れの再婚家庭、夜間就労せざるを得ない親など、孤立した不安定な家庭が増加している」と語る。「健全とみられる家庭も地域や親族の支えがなく、不安定になるケースもあり、こうした環境下で親の未熟さとして虐待が表れる面はある。地域や家庭の特性に応じた支援が虐待予防のためにも重要だ」と強調する。

 松田医師は児相を取り巻く環境の悪化も懸念する。「ハードワークな上に何かあれば周囲にたたかれ、職員のなり手がいない。虐待への対応を児相に任せきりにせず、警察や医療、福祉などが広く連携するなど、根本的に虐待対応の仕組みを考え直す時期にきている」と訴える。

 厚労省の専門委員会は虐待対応を巡る課題について議論しており、厚労省はその結論を踏まえ、児童福祉法などの改正を目指す方針。



Posted by いざぁりん  at 02:15