京つう

イベント  |伏見区

新規登録ログインヘルプ



こちらです。
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20170704/biz/00m/010/015000c
(以下は、コピーです)
川井龍介 / ジャーナリスト

 「そんなつもりでいったんじゃないのに」、「真意が伝わらないなあ」。そんな思いをしたことは誰にでもあるのではないでしょうか。

 Aさんは部下宛てのメールで「もう少し周囲とのコミュニケーションがうまくできれば、君もいいんだけれど」と書きました。将来性を見込んで激励したつもりだったのですが、部下は、自分は評価されていないんだ、とがっかりしてしまいました。

 言葉だけを見れば、激励しているととれないことはありません。でも、注意しているとも受けとれます。この言い方には「誤解」を生じる余地があったと言えます。

どうみても「誤解」の余地のない発言

 昨今問題になっている稲田朋美防衛相の失言について、本人は「誤解を招きかねない発言」だったとして撤回し、謝罪しました。しかし、この場合はどうみても「誤解」の余地はありませんでした。

 稲田氏は東京都議選の自民党候補を応援する板橋区での集会で、「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたいと思っているところです」と訴えました。やや日本語として不自然なところはありますが、発言者である稲田氏が「自衛隊や防衛相が特定の候補の応援をする」ということを認めていることは明らかです。

 憲法第15条2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定しています。公職選挙法は第136条の2で公務員の地位を利用した選挙運動を禁止しています。自衛隊員は自衛隊法第61条によって、選挙権の行使を除く政治的行為が制限されています。

 しかし、こうした法律論を持ち出すまでもなく、政治的に中立であるべき自衛隊という国の機関が、特定の政党の候補者を組織として応援するのが自由だったらとんでもないことになるというのは常識です。

筋の通っていない釈明

 稲田氏は、この発言の意図は別のところにあったと言います。集会が行われた板橋区に隣接する練馬区に陸上自衛隊練馬駐屯地があるので、「防衛省・自衛隊の活動に地元の理解と支援をいただいていることに感謝の気持ちを伝える一環として、そういう言葉を使った。あくまでも自民党として応援しているということを伝えたかった」と釈明しました。しかし、この釈明も筋が通っていません。

 「防衛相・自衛隊への理解や支援に対する感謝の気持ち」とは、防衛相や国としての立場からのものであるはずです。つまり、稲田氏は防衛相として、地元への感謝の気持ちを伝えているのに、その一環で「自民党候補者への応援をお願いしたい」と言っていることになります。大臣の地位を利用しているわけです。最後の「(自分の発言は)あくまで自民党として応援している」という部分は、その前の文脈と整合性がありません。

 仮に、地元への感謝の気持ちを伝えたいというのが本当だとすれば、一連の発言の脈絡からうかがえる稲田氏の本音は、次のようなものではないでしょうか。

 「地元の方には、自衛隊が日ごろお世話になっているので、自衛隊として、防衛大臣としてお礼を申し上げたい。ところで自衛隊、防衛大臣としては、いま自民党の候補を応援しています。だから、みなさんに感謝し、お礼を申し上げている自民党の候補をよろしくお願いします」

「誤解を招きかねない発言」は事実のねじ曲げ

 稲田氏の発言についてここまで細かく考察したのは、一般の人が誤解しようもない重大な内容の発言について「誤解を招きかねない発言だった」と、事実をねじ曲げているからです。

 政治家など公職についている人が公人として発言したことや書いたものは、その言葉どおりに受け取られることを覚悟し、言葉の意味することに責任をもつ必要があります。学校で生徒が先生に「この文章は、ほんとうはこういうことを言いたかったんです」などと言ってやりとりをするレベルとは違います。

 従って稲田氏の発言は釈明の余地がないのです。「誤解を招きかねない」などという言い方を受け入れてしまっては、皮肉なことに「誤解」になってしまいます。「大臣として政治家として、重大な過ちを犯している」。それが正しい理解です。



Posted by いざぁりん  at 00:56