京つう

イベント  |伏見区

新規登録ログインヘルプ



こちらです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160325-00000006-wordleaf-soci&p=1
(以下は、コピーです)

 「保育園落ちた~」のツイートで、政府が「一億総活躍社会」をうたっていながら、子どもの預け先が見つからず、仕事に専念できない母親が困っている実情をまざまざと突きつけられた。これほど望まれているにも関わらず、保育園が足りない背景には、保育士不足が挙げられる。保育士の給与や待遇改善が早急に計られる必要もあるが、そもそも子どもがいても女性が活躍している国は、小さな子どもの預け先をどうしているのだろうか?

 福祉国家・スウェーデンと市場原理の国・米国での保育園事情を見てみると、保育園整備について国がどの程度、介入しているのかという点がまず違う。至れり尽くせりのスウェーデンは理想的なモデルと思われる。一方、米国は富める者、そうでない者が置かれた立場で子育てと仕事を両立させている。

 まだまだ育児は女性の手にゆだねられることが多い日本。女性が輝くためには、どちらの国をモデルに進んでいくべきか、あるいは別の道を模索していくのか? 海外の保育園事情に詳しい、埼玉大学大学院・教授の田中恭子さんの解説とともに考えていきたい。
.

 先進国の中で出生率が高いのは、子どものいる夫婦が共働きが可能な諸国である。それらの諸国は、一つはスウェーデンのような社会民主主義的福祉国家の類型と、もう一つは米国を典型とする市場原理を信奉する自由主義的福祉国家類型である。以下、スウェーデンと米国の働く女性の保育事情を紹介する。
.

福祉国家・スウェーデンは「子を持つ親の働く環境も保育園も充実」

 スウェーデンでは、子どもの住居する近隣に必ず保育園があり、待機児童もいない。スウェーデンでは、法律により自治体は子どもの家のそばに保育園を設置しなければならない義務があり、自治体は住宅開発をする都市計画において、保育園、学校、病院、商業施設などを適切に配置している。

 駅やバスの終点の徒歩圏に集合住宅が立地し、徒歩圏に保育園が立地している。しかも集合住宅地区では徒歩圏内に複数の保育園が立地しているのが普通である。スウェーデンの保育園は、乳母車で子どもを送迎できる徒歩圏に立地しているである。集合住宅地区よりも人口密度が低い一戸建て住宅地においては、自宅において保育する家庭保育所(保育ママ)も多く分布している。

 保育園は公営と民間の保育園があり、自治体は年齢別の1人当たり予算を各保育園に配分して保育園が運営されている。保育園の運営にはそれぞれ独自の教育理念・哲学に基づいており、親が自由に選択でき、保育園間に競争原理が働く仕組みとなっている(※注1) 。

 子どもの家から保育園へのアクセスがいいということは、保育園の収容人数から見る規模は、日本の保育園よりもはるかに小規模であることを意味する。単独立地する保育施設もあったが、集合住宅の中に保育園が設置されているケースも多い。集合住宅では1階部分に保育園が開設されて、集合住宅の中庭が遊び場として利用される 。20人程度の異年齢児を一緒に保育する縦割り保育が行われる(※注2)。集合住宅の中の3戸分の居住スペースを、仕切りドアを開放して、連続した広い保育スペースとして活用できる構造になっていた。賃貸スペースを保育の場として利用することよって、地域の需要変動にフレキシブルに対応することが可能となっている。

 スウェーデンの保育園には0歳児保育はない。母親、あるいは父親が皆、育児休暇を取得し、育児休暇中は、自営業も含めて皆、手当てが給付される。また、スウェーデンの保育園には夜間保育もない。お迎え時間も早く、午後5時に残っている子どもはほとんどいない。小学校6年生まで、親は労働時間を短縮する権利が認められているので、子どものいる母親の有業率は高いが、ほとんどの母親の労働時間はフルタイムではなく、たとえば、30%とか、50%とか、子どもが幼い時期は労働時間をかなり短縮して働く母親が大半であった。スウェーデンの働く母親の子育ては、子どもにも親にも余り無理がかからないようなゆとりのあるものであった。 

同一賃金同一労働の原則が貫かれた福祉国家なので、保育士の賃金が極端に低く抑えられることもない。資格と経験により昇級するが、年齢間格差が余り拡大しない賃金体系である。

(※注1)民営保育園は保育士への特別研修の機会を提供し、さまざま工夫をし、保育サービスを向上させるので、概して親には好評であった。

(※注2)スウェーデンの集合住宅の窓ガラスは二重窓で防音効果が高く、幼児が裏庭で遊んでいても、その騒音が問題になることはない。また、集合住宅の敷地では、自動車の進入経路を別に設置しているので、自動車による事故を心配するする必要もない。周辺に緑の多い公園が設置されているので、完全な遊び場に困ることもない。

市場原理の国、米国は「保育園に国家は介入せず」

 一方、市場原理の国、米国でも働く母親の有業率は比較的高い。米国の保育はプライベートの問題とみなされており、国家は介入せず、保育サービスは市場によって供給されている。従って、政府による民間保育園への補助金は支給されていない。営利目的で活動が行われる民間保育園の保育料は高額で、しかも保育の質も確保が難しい。保育士の賃金は低く、保育士の離職率も高い。 

 米国の大都市圏の郊外には、白人中間層を主なターゲットとした、全米にチェーン展開する営利目的の保育園が立地している。沿道沿いに駐車場が広く確保された保育園が立地し、建物の脇に高い柵で囲まれた園庭はかなり狭い (※注3)。民間保育園の高額な保育料を負担できない貧困世帯、特に主に片親世帯には、州政府が所得に応じて保育バウチャーという形態で保育料の補助金を支給している。インナーシティの貧困層が居住する地域には、教会などの非営利団体の保育園が立地している。低所得世帯の母親を主な対象として、家庭保育所を開設する資格を得るための研修も行われている。

 ただし、米国の働く母親の保育園の利用率はそれほど高くなく、それ以外の形態の保育サービスも利用されている。たとえば、所得の高い世帯では、ナニーと呼ばれる住み込みのベビーシッター(メキシコの移民などが低賃金で働く)を利用する。一方、低所得の働く母親は、友人、知人などに安い料金で預けることも多い。彼女らは自宅で自分の子どもを育てながら、知り合いの子どもを預かる(※注4) 。

 また、(主にブルーカラーの)夫婦間で1日24時間の労働時間のシフトを調整して、子どもを預けずに子育てしている夫婦もいる。また、米国の労働市場は流動的なので、子育てのために労働市場から一時的に退出しても、資格や経験があれば、それなりの職を再び得ることが可能である。このように、市場原理の国、米国では、階層間で保育の対処は違って多様であるが、女性の就業が大きく阻まれることはない。

(※注3)そのような民間保育園は学童保育も同時に実施しており、保育園のスクールバスが、朝夕、小学校への送迎を行っている。米国の公立小学校には通常、学童保育も併設されているが、夏休みや休日は休みであったりするので、働く母親にはやや使い勝手は悪いからである。

共働きが困難な国は出生率が低迷する

 問題は「3歳児神話」が根強い主に南欧諸国で、働く母親のための保育園が少なく、女性が働くか、子を産み育てするか、の二者択一をせまられる諸国である。

 その典型的な国がイタリアやドイツである。そのような国では出生率が低迷し続けている。日本も夫婦共働きが困難で、出産・保育によって大幅に低下する女性の生涯所得が課題となり、いつまでも出生率が低迷し続けている。

(埼玉大学大学院・人文社会科学研究科(経済系)教授 田中恭子)
著書に『保育と女性就業の都市空間構造ースウェーデン、アメリカ、日本の国際比較ー』時潮社 2008年、『アメリカの金融危機と社会政策ー地理学的アプローチ』時潮社 2015年、がある。



Posted by いざぁりん  at 09:26